400万ヒット記念企画
アンケートSS(ショートストーリー)

このSSはアンケートの結果によって、その展開や結末が変わるSSです。

アンケートは2008年の年末から2009年の年明けまでに行われました。参加してくださ
った皆様、本当にありがとうございました。


 プラント最大の遊園地の門の前。家族連れや恋人達が行き交い、中に入っていくのを横目で
見ながら、ガーネット・バーネットは佇んでいた。
「遅い……」
 ガーネットは腕時計を見て、ため息を付く。待ち合わせを約束した時間から、四十分も過ぎて
いる。
「これだけ待たされると、いくら辛抱強い私でもイライラしてくるわね。ニコルったら、何やってる
のよ。一ヶ月ぶりのデートなのに遅刻するなんて、私への愛が足りないんじゃない?」
 ガーネットは年下の恋人の顔を思い浮かべて、グチを言う。
 第一次C.E大戦が終わって平和になってから、お互い仕事で忙しくなり、なかなか会えなくな
った。それでもようやく休みが取れ、今日のデートを楽しみにしていたのに、
「それなのに、それなのに……。あー、もう、ホントに遅い! 何やってるのよ! 携帯にも出な
いし、もう帰ろうかしら?」

ガーネットはこれからどうする?
ストレス解消として、通りがかったディアッカを殴る 91票
ニコルが約束を破るなんてあり得ない。もう少し待ってみる 53票
腹が立つので、デートに来た某バカップルにケンカを売る 52票
もう我慢できない。帰る! 3票

「うおっしゃあ!」
「げふっ!」
 ガーネットの強烈な右ストレートが、通りがかったディアッカの顔に炸裂。彼の体を吹き飛ばし
た。
「グ、グレイトなストレートだぜ……。って、何で俺が殴られるんだよ」
「気にしないで。ただのストレス解消だから。ところで、どうしてあんたがこんな所をウロウロして
るのよ」
「そういう事は殴る前に聞けよ」
「隊長、大丈夫ですか?」
 倒れたディアッカを、若い男が助け起こす。
「あら、あんたはエルスマン隊の…」
「ディス・ロイです。こんにちは、ガーネットさん」
 ナチュラルでありながらザフトに入隊した変わり者のエース、『緑の疾風』と呼ばれる男は丁
寧に頭を下げる。
「あ、どうも、ご丁寧に。え? 男二人で遊園地に来るなんて、あんた達、もしかして、デート?」
「ちげーよ。俺達はシホの後を付けてきたんだよ」
「シホって、あんたの副官のシホ・ハーネンフース? あの子がこの遊園地に来てるの?」
「ええ。シホさんは今日は非番なんですけど、昨日から妙に浮かれてて、様子が変だったんで
すよ。それで隊長が後を付けようって」
「で、エルスマン隊の仕事をほっぽり出して、尾行しているのね。ザフトって暇なの?」
「いや、仕事は溜まっている。ヴァネッサの奴が何とかしてくれるさ」
「あんたの部下に同情するわ……。あら? あそこにいるのは、噂のシホちゃんじゃない?」
 遊園地の門から少し離れた所に、普段着を着たシホが立っていた。そこへ一人の男がやっ
て来る。どうやらシホと待ち合わせをしていたらしく、二人は親しげに挨拶を交わす。
「やっぱりデートだったか。俺の睨んだとおりだな」
「ええ、そうみたいですね。でも隊長、相手の男の人はどこかで見た顔なんですが」
「嘘! あれは……」

シホのデート(?)のお相手は、
イザーク・ジュール 94票
ニコル・アマルフィ 62票
キラ・ヤマト 33票
アスラン・ザラ 16票
ムウ・ラ・フラガ 14票

「あ、思い出した。あの人はイザーク・ジュールさんですね。確か隊長のお仲間で、前の大戦で
大活躍したMSパイロットで……あれ? あの人って確か、ナチュラルの恋人がいたんじゃない
ですか? 名前は…」
「フレイよ。私の親友」
 ロイの疑問に答えてあげたガーネットだったが、その声は冷たいものだった。
「あの若白髪小僧、フレイが地球のアルスター家に荷物を取りに行っている間にデートとは、い
い度胸してるじゃない。フレイの友達として見過ごせないわ」
「お、おい、落ち着けよ、ガーネット。取り合えず、その巨大ハンマーを下ろせ。って、そんな
物、どこから持って来たんだよ」
 冷や汗を流しながらもディアッカは、昔、父に言われた事を思い出した。女はどこからとも無く
100tハンマーを取り出せるものなのだ。だから絶対に浮気はするな。
「父さん、あんたは正しかった。俺は絶対にミリィを裏切らない! 殺されたくないからな」
「何ブツブツ言ってるのよ。あんた達も手伝いなさい。あの浮気者を取り押さえるのよ」
「いや、だから寄せって」
「そうですよ。落ち着いてください、ガーネットさん」
 いきり立つガーネットに優しく声を掛けてきたのは、彼の最愛の恋人だった。
「ニコル!」
「遅れてすいません。来る途中、色々あって。ディアッカと、そちらはディス・ロイさんでしたね。
二人とも、ガーネットさんと一緒に何をしているんですか?」
 ガーネット達はニコルに事情を説明した。驚くニコル。その間にイザークとシホは遊園地の中
に入って行った。
「信じられませんね。あのイザークが浮気をするなんて、あり得ません」
「けど、イザークも男だからな。恋人が留守の間、一人寂しく過ごすより、可愛い女の子とデート
したいって思うものだろ」
「そうなんでしょうか? うーん……」
「ニコルはイザークが浮気をしていないって思うのね。だったらあの二人は、どうして遊園地に
やって来たの?」
「そ、それはですねえ……」

ニコルが考えた、シホとイザークがデート(?)をしている理由
シホの極秘任務に協力している 59票
シホの口車に乗せられて連れ出された 59票
フレイとのデートに備えての事前調査 54票
遊園地の、ペアで乗る乗り物に乗りたかった 9票

「えーとですねえ、シホさんはザフトの極秘任務についていて、それでイザークに協力を…」
「そんな任務、俺は聞いてないぞ。極秘の任務が入ったら、隊長の俺にも何か報せが入るは
ずだろ」
「そ、そうですね……。じゃあイザークの事が好きなシホさんの口車に乗せられて、巧妙におび
き出されたとか」
「副隊長は、そんなに口の上手い人じゃないです。むしろド下手ですね」
「そうそう。おかげで俺も大変なんだよ。あいつがもうちょっと口が回る奴なら、俺も楽が出来る
んだけどなあ」
「そうなったらディアッカ、あんた間違いなくクビよ」
「そうですね。隊長の存在価値って、副隊長より口が上手いって事だけですから」
「ぐっ。ロイ、お前もなかなか言うようになったじゃないか」
「冗談はそれくらいにして、あの二人の後を付けるわよ。ニコルの推理が正しいのかどうか、様
子を見ましょう」
 こうして四人も、遊園地の中に入った。ちなみに四人分の入場料はディアッカが支払った。
「ちょっと待て。部下のロイはともかく、何であとの二人の分まで俺が…」
「しっ。隠れなさい、気付かれるわよ」
 建物の影に隠れる四人。彼らの視線の先には、明るい表情をしたシホと、周りをきょろきょろ
と見回しているイザークがいた。
「シホの奴、随分と楽しそうだな。俺と一緒に仕事している時とは別人みたいだ」
「そうですね。仕事中の副隊長って、はっきり言って鬼ですもんね。誰かさんのせいで」
「でもイザークの方は、楽しそうじゃありませんね。何かを探しているのか、それとも警戒してい
るのかな?」
「ふーん。シホはともかく、イザークがここに来たのは、デートの為じゃなさそうね」
「そうみたいですね。あ、ガーネットさん、あの二人、お化け屋敷に入りましたよ」
「私達も行くわよ」
 二人を追って、ガーネット達もお化け屋敷に入る。この屋敷、外見は和風だが、中の部屋は
なぜか洋風になっている。出て来るお化けも和洋混合で、お岩さんの後にゾンビの大群が現
れたり、人魂と共にドラキュラが現れたりと無茶苦茶だ。
「このお化け屋敷、怖いと言うよりは面白いわね」
 楽しむガーネットを先頭にした四人は、広いダンスホールに出た。そこでは立体映像の幽霊
達が、クルクルと回り踊っている。
「どうやらここが中間地点みたいね。見て、あっちに次の部屋への扉があるわ。赤い色の扉な
んて、なかなか雰囲気を出しているじゃない」
「ガーネットさん、向こうにも扉がありますよ。あっちの扉の色は青ですね」
「隊長、扉があそこにもあります。緑色の扉です」
「こっちには黒い扉があるぞ。全部で四つか。けど、入れる扉は一つだけみたいだ。どの扉に
入ればいいんだ?」
「そうねえ……」
 ガーネットは四つの扉を見ながら考える。扉にはそれぞれアルファベットの大文字が刻み込
まれているが、何を意味するのかは分からない。
 しばらく考えた後、
「よーし、せっかくだから私はこの扉に入るわ!」
「文法がおかしいですよ、ガーネットさん」
「ニコル、あれは元ネタどおりなんだぜ」

ガーネットが選んだ扉は、
「X」の文字が刻み込まれた、黒の扉 67票
「Z」の文字が刻み込まれた、赤の扉 54票
「W」の文字が刻み込まれた、緑の扉 34票
「V」の文字が刻み込まれた、青の扉 9票

「この黒の扉に入りましょう。ダークネスの色だし」
「結局自分の好みで選ぶのかよ。いい加減だな」
 ディアッカのツッコミは無視され、四人は黒い扉の部屋に入った。
 部屋の中は闇一色だった。しかし後ろの扉が勝手に閉まると同時に、一筋の光が照らされ
た。光の先にはテーブルがあり、そこには一丁のライフルが置かれている。
 続いて、天井から機械による音声が流された。
「ようこそ、戦士達よ。君達の前にあるのはプラントの新兵器サテライトキャノンの発射装置
だ。君達にはこの新兵器で、プラントを襲う敵を倒してほしい」
 そして四人の前に、巨大な映像が現れた。宇宙空間を背に、地球軍のMSがこちらに向かっ
て来る。
「要するに、射撃ゲームね。あれをライフルで撃って落とせばいいのね」
「だったら俺に任せろ! 実践で鍛えたグレイトな腕前を見せてやるぜ!」
 名乗り出たディアッカは銃を手に取り、ゲームに挑戦した。自信に満ちていただけあって、デ
ィアッカは次々と敵MSを落としていく。
「やるわね。さすがはバスターのパイロット」
「実戦でもこれくらい活躍してくれたら、僕達はもっと楽だったんですけどね」
「ニコルさん、それは言わないであげてください。隊長は実戦よりゲームの方が得意なんです」
「分かっています。でもロイさん、それ、全然フォローになってませんよ」
 外野の声は聞こえていないのか、結局ディアッカは最高得点でクリアした。再び機械の音声
が流れる。
「おめでとう! ですが、これ程の優秀な人材を返す訳にはいきませんね。あなたには新しい
道を用意して差し上げましょう」
「えっ?」
 と驚く間もなく、床が大きく開いた。ディアッカを含む四人は、地の底深くへと落ちていった。

「う……」
「あ、気が付いたみたいですよ」
「ふん、ようやくお目覚めか。呑気なものだな」
「え、あなた達はシホと、イザーク? こんな所で何してるのよ。それにここは…」
 気絶していたガーネットは、シホとイザークの後ろにある鉄格子を見る。どうやらここは牢屋
らしい。
「ニコル達は別の牢だ。ここがどういう場所なのか、貴様にも大体の見当は付いているんじゃ
ないのか?」
「………………ええ、何となく分かったわ。ここは…」

ガーネット達が放り込まれた地下牢。ここは、
ここは私とニコルの新しい愛の巣 85票
ここはリ・ザフトが作った秘密基地 44票
ここはブルーコスモスのコーデイネイター用の処刑場 24票
ここはディプレクターに逆らった者を入れる反省房 12票

「ここは私とニコルの新しい愛の巣、つまり新居! だったらあそこに冷蔵庫を置いて、あっち
は子供部屋に、あそこの隅には豪華絢爛なツインベッドを……って、ツッコミなさいよ、イザー
ク。せっかくのボケが台無しじゃない」
「あ、今のは冗談だったのか。すまん、本気で色惚けしているのだと思って、呆れていた」
「私は尊敬していました。こんな状況でも愛を語れるなんて、さすがはガーネット・バーネット、
心の強い御方です」
「シホ・ハーネンフース、お前はこの女を買い被り過ぎている。早く目を覚ませ」
「失礼ね。で、この遊園地のオーナーはどっちなの? リ・ザフトか、それともブルーコスモ
ス?」
 ガーネットの眼が真剣な眼差しを放つ。この遊園地が敵組織の手中にある事は明白だ。問
題は敵がどの組織なのか、だ。コーディネイターの廃絶を企むブルーコスモスだとすれば、自
分達だけでなく、ニコル達も危ない。
「ここはリ・ザフトの秘密基地です。この遊園地のオーナーは二年前の戦争で息子さんを失って
いて、リ・ザフトに協力しているんです」
 シホが説明する。ここ最近、コーディネイターの行方不明事件が続発しているのだが、被害
者達の足取りを追ってみると、皆この遊園地で途絶えている。
 警察が調べてみたが、遊園地のガードが固くて、なかなか証拠が掴めない。警察に務めてい
る友人から事情を聞いたシホは、自らオトリ役を志願。リ・ザフトの調査をした際にこの事件の
事を知り、協力を申し出たイザークと共にやって来たのだが、
「まんまと捕まった訳ね。情けないわねえ」
「貴様にだけは言われたくないぞ。それで、これからどうする?」
「決まってるでしょ。ニコルの事も気になるし、こんな町のど真ん中にテロ組織の基地を作らせ
る訳にはいかないわ」
 ガーネットの言葉に、イザークとシホも頷く。
「そうと決まったら、ここから出ましょう」
 シホは靴のかかとを外した。中から小さな粘土の塊のような物が出て来た。
「プラスチック爆弾とは、用意がいいわね」
「貴様こそ、銃など何処に隠していた?」
「女の体には隠す所なんてたくさんあるわ。具体的に言ってあげましょうか?」
「やめろ。よく分からんが、聞かない方が精神衛生上にいい気がする」
 そう言うイザークも、隠し持っていた拳銃を手にしている。戦闘態勢は整った。
「では、行きますよ」
 シホがそう言った瞬間、遠くの方から爆発音が聞こえた。
「な、何だ、今の音は!?」
「ニコル達ね。ロイって子が色々持っていたみたいだから何とかするとは思っていたけど、どう
やらあっちが先に動いたみたいね」
「ちっ、俺達も急ぐぞ!」
「はい!」
 シホの仕掛けた爆弾は鉄格子の扉を難無く吹き飛ばし、三人は牢の外に出た。
 基地内に警報が鳴り響く。リ・ザフトの兵達と思われる連中が現れ、銃を撃ってきた。
「私の邪魔をする気? ニコルとのランデブーを阻む奴らは、全員地獄送りよ!」
「さすがはガーネット・バーネット、数で勝る相手をまったく恐れず、堂々と立ち向かっていく。あ
あ、私もあんな戦士になりたい……」
「ザフトの先輩として忠告しておく。あの女だけは見習うな」
「あら、新手だわ。さすが敵の基地、数が多いわね。さて、どうしようかしら?」

リ・ザフトの兵士達を前に、多勢に無勢のガーネットがしたのは、
「出ろ、ダークネスガンダム!」と叫ぶ 111票
ニコル達と合流したいので、愛のテレパシーを送る 35票
敵のボスの居場所を知る為、敵兵を捕らえる 16票
武器庫を探し出して、武器を調達する 10票

「出ろおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!! ダークネスガンダアアアアアアアアア
アアアアアアアアム!!!!!」
 指をパチンと鳴らし、叫ぶガーネット。地下牢全体に、いや地上にまで響くのではと思われた
ガーネットの絶叫に、リ・ザフトの兵士達も一瞬怯む。
 が、特に何も起こらなかったので、再び銃撃。
「うわっ、危ないわねえ」
 物陰に隠れたガーネットに、イザークが詰め寄る。
「貴様、こんな時に何をふざけているんだ! あんな大声で呼んで、MSが来ると思っているの
か!」
「イザークさんが呼べば来るような気がします」
「黙っていろ、シホ・ハーネンフース」
「来るわよ。この前、ダークネスに私の声に反応して飛んでくる装置を付けたの。ディプレクター
の科学者達が作ってくれた試作品よ」
「……取り合えず、ディプレクターがお前にピッタリな組織なのは分かった。で、ダークネスはい
つ来るんだ?」
「えーと、私が呼んだ後、上に出撃許可を申請して、その許可が下りるまで待って、その間にプ
ラントの方にも話を通して……」
「随分と手間が掛かるんだな」
「色々あるのよ。そうね、一時間くらい掛かるかしら?」
「遅すぎるだろうが!」
 非常にもっともなツッコミが入った。ちなみにこれが理由で、この『呼べばMSが来てくれる素
敵な装置』(名称募集中)は不採用になった。
「どうするつもりだ。このまま隠れていても、いつかは殺されるぞ」
「そうね。ダークネスが来てくれたら楽だったんだけど、仕方ないわ。私がオトリになるから、あ
んた達二人は逃げなさい」
「いいえ、これはザフトの作戦です。ここは私が行きます」
「待て、貴様ら。女二人に危険な仕事をさせるなど、俺のプライドが許さん。ここは俺が行く」
 自分が危険な仕事をする、と退かぬ三人。
「仕方ないわね。じゃあ三人一緒にオトリになりましょう」
「それじゃあオトリにならんだろうが!」
「冗談よ。やっぱりここは私が…」
 行こうとしたガーネットだったが、敵兵士達の後方から新たな銃撃が。敵兵は次々と倒れ、つ
いには逃げ出した。後に現れたのは、
「ニコル!」
「ガーネットさん、無事で何よりです」
「ディアッカ達も一緒か。自力で牢を抜け出しただけでなく、こんなに早く俺達を見つけるとは驚
いたぞ」
「そうですね。副官として、とても信じられません」
「おいおい、シホちゃん、それが隊長に向かって言う台詞かよ?」
「それに、あれだけ大きな声で叫べば、誰にだって居場所は分かりますよ。味方だけでなく、敵
もですけどね」
 ロイの言うとおり、新たな敵兵の足音が近づいてくる。
「どうする、ガーネット。さっきみたいなバカな真似は通じないぞ」
「分かっているわよ。敵が来る道じゃなく、こっちにある別の道から逃げましょう」
 ガーネットとイザーク、シホの一行に、ニコルとデイアッカ、ロイが加わった。六人は日の光が
一切差さない、暗闇の地下道を歩く。
 逃走劇は成功した。そんなに長くない時間ではあったが、狭い地下道を視界ゼロで歩くのは
苦しかった。
 そして、地下道を抜けた六人の前には……。

地下道を抜けた先でガーネットたちを待っていたのは?
実は全部『ドッキリ』でした。イザーク達も騙された!
味方の援軍。キラ達も登場?
拍手するメレアがいます。あれ? この時点で会ってもいいの?
敵の大群。危うしガーネット!

「はーい、どうも皆さん、ご苦労様でしたー!」
 地下道の出口にいたのは、ニコニコ笑うタレントらしき男と多くの人々。全員、『大成功!』と
描かれたプラカードを持っている。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
 呆気に取られるガーネットとイザーク。ニコルとシホとロイも同様だ。
 ただ一人、ディアッカはこの急展開を理解した。
「え、これってもしかして、ドッキリ?」
「はい、そのとおりです。皆さん、ご苦労様でした」
 司会者らしいタレントは、にこやかにそう答える。
 何とも古い、しかも異常に大掛かりなネタ振りだったが、こういうネタは大掛かりであればある
程ウケる。そういう意味では、この仕掛けをしたテレビ局の判断は正しかった。
 唯一の、そして致命的な間違いは、
「…………ふーん。あんた達、こんなくだらないイタズラで、私とニコルのデートを邪魔したん
だ」
 ガーネット・バーネットが本気で怒った事。彼女のニコルへの愛を、軽く考えていた事だ。
「え? い、いえ、そんなつもりは全然ありません。これは番組の企画で…」
「番組の企画だからって、何でもやっていいはずないでしょ。あんた達は絶対にやっちゃいけな
い事をやったのよ」
 殺気を漲らせるガーネット。スタッフ全員が命の危険を感じた。
「あ、あわわわわわ、だ、誰か助けてーっ!」
 助けを求めるタレント。だが、
「ふん。自業自得だ」
「私も許せません。本気で任務だと思ったのに……。ザフトの上層部にもオシオキしましょう。」
「僕も怒りました。手伝います、ガーネットさん」
 イザークもシホも、ガーネットを止めるつもりは無いようだ。ニコルはむしろガーネットに協力
しようとしている。
「真面目な人を怒らせると怖いですね。隊長はどうするんですか?」
「ほっとく。マスコミに義理は無いからな」
「じゃあ俺も」
 見物客になったロイとディアッカの前で、ガーネットとニコルの『共同作業』が行われた……。



 数日後の地球、オーブ共和国。
「あれ? 『新春!  世界の有名人ドッキリ祭り』は放送中止になったのか。つまらない正月番
組の中で、唯一面白そうだったから楽しみにしていたのに」
「カガリ、サボッてないで仕事をしろ。政治家に正月休みなど無いぞ」
「真面目だな、アスランは」

 同じ頃、オーブのディプレクター本部。
「ラクス、ガーネットさんを謹慎にしたんだって?」
「ええ、キラ。お姉様、ちょっとはしゃぎすぎたので、一ヶ月謹慎にしましたわ」
「一ヶ月か。それくらいの自宅謹慎、ガーネットさんだったら長期休暇だって喜ぶかも」
「自宅謹慎ではありません。ニコルさん謹慎ですわ。一ヶ月の間、ニコルさんと会う事も話す事
も禁止です」
「それは…………厳しいね」
「新年早々、厄介ごとを起こした罰ですわ。さあキラ、一緒に初詣に行きましょう♪」
 コズミック・イラ73、新年明けましておめでとうございます。

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